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「地域の医療と健康を考える会」に参加して(9月26日、早稲田大学・本庄キャンパス)

text by

小泉龍司

2009.09.29

「地域の医療と健康を考える会」は通称「GHWの会」と呼ばれています。

 G―群馬大学(医学部) H―本庄市民 W―早稲田大学の三者が主体となって、地域の医療をテーマとして、幅広い分野から講師を招き、早稲田大学・本庄キャンパスで勉強会が開催されています。

 今回私もお招き頂き、初めて参加させて頂きました。今回は、公立病院の経営管理を専門とされている谷田一久氏(㈱ホスピタルマネジメント研究所代表/医療経営学者)を講師としてお迎えし、公立病院のあり方を通じて、地域医療の問題について、貴重なお話を伺いました。

 印象に残ったのは次のような点です。

(1) 小泉「構造改革」の中で「三位一体改革」が行われ、地域財政に大きな負担がかかった。その結果、本来地域医療の中核を担うべき公立病院(全病院・診療所約1万の中の約1割=1000病院)がお荷物扱いされるという歪んだ状況にある。

(2) また、医療を取引される「サービス」として捉える市場原理主義の考え方に基づいて、医療従事者は、効率追求に駆り立てられ疲弊してきた。

(3) すでに病院経営の効率化は限界に達しており、より大きな制度的な壁を打ち破っていかねばならない。

(4) (3)で述べた制度的な壁というのは、

医療機器メーカーや製薬メーカー ⇒大黒字
上記の流通部門         ⇒小黒字
病院              ⇒赤字

という構造をもたらしている現在の医療関係制度のことである。ここを改善する必要がある。

(5) (2)と(3)の結果、これまで医療の現場を支えてきた「職業倫理」が評価されることはなくなった。

 今必要なものは、医療の新たなシステムではなく、医療従事者が自らの良心と職業倫理に則って献身的に働き、そして評価される環境を取り戻すことである。

(6) 患者・住民が医療従事者を信頼すれば、彼らは必ず応えてくれる。

(7) 現場を知らないマスコミが、底の浅い知識で医療を批判する風潮も困ったものである。

(8) そういう意味で、地域の公立病院はみんなで支えるべきものである。

 特に公立病院のオーナーは、その地域の住民であることを忘れてはいけない。その公立病院に対して何ができるかを考えるべき。税金を払ったら、あとは批判するだけというのはおかしい。少しずつ全国各地でそういう動きが始まってきている。

(9) 一昨年、総務省が出した「公立病院改革ガイドライン」でも、例えば病床利用率を70%以上にする必要がある、と書かれている。この基準を満たせない病院はベッド数を減らせ、ということだが、これは本末転倒。そもそも病院とはいざという時の備えであり、その備えの中で病床利用率0%であることが理想である。いざという時に備えて、みんなで非効率を支えていくべきものである。

(10) 最近、医療機関の役割分担を明確化しようという動きが厚労省などにあるが、医療はあいまいな領域がある。そういう領域にいる患者さんが置き去りにされるリスクが高まる。

(11) 各県に一つ医科大学が配置されている。これらの医科大学は、ノーベル賞を狙うのではなく、その県内の地域医療のあり方を考えてもらいたい。

(12) 一人の医師を養成するのに約1億円の税金がかかる。そうして養成した医師の勤務地を本人に自由に選ばせるという発想=新臨床研修制度が間違っている。この研修制度が医師の偏在、ひいては地方における医師不足の主因である。

(注)以上のまとめについては、谷田先生のお話についての、私の主観的な理解が含まれています。