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再生医療製品の実用化促進のための薬事法改正と難病治療薬の取扱いについて―難病治療薬・承認の迅速化に向けて動く―

text by

小泉龍司

2013.05.07

1.京都大学の山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞し、IPS細胞の活用への国民の関心が高まる中、再生医療の迅速な実用化を実現すること等を目的として、現在、「薬事法の改正案」が取りまとめられているところである。
 法案には、医薬品等の安全対策の強化などの項目も含まれているが、再生医療製品の実用化を促進するための新しい承認制度(市販を認めるための治験や承認を迅速化することを目的とする)は、この法案の目玉政策の一つとなっている。

2.再生医療製品は、人間の細胞を加工して製造するものであるため、品質が不均一であったり、人によって治療効果に大きな差異が生じたりするため、承認の前提として、これまでの治療薬と同様のレベルの治験結果を求めると、承認までに多くの時間を要することになってしまう、という問題がある。
 そこで今回の法案では、

(イ)治験の段階についてはこれを短縮化して、有効性については「確認」ではなく「推定」で足りることとし、
(ロ)承認の段階では、条件や期限を付して承認を与えて市販を認め、
(ハ)市販後に有効性、更なる安全性を検証した上で、一定期間内に最終承認する。

という制度を導入することを予定している。
 これによって、再生医療製品の市販までの期間が短縮されることが期待される。

3.こうした法改正の内容について、再生医療製品や難病治療薬の製造に取り組んでいる製薬メーカーの協議体である「バイオテク協議会」の皆さんの意見を踏まえ、私と同協議会の塩村理事(ノーベルファーマ(株)代表取締役社長)から、与党及び厚労省に対して、次の2点について問題提起と要請を強く行ってきている。

(1)上記の簡素化された承認手続きの下で暫定承認された再生医療製品についても、保険適用を認めるべきである。保険適用が認められないのであれば、市販を迅速化しても、実際には患者によって使用されることはないであろう。
(2)患者数が少なく、十分な数の治験結果をなかなか得られない難病治療薬も、これまでの承認制度の下では承認までに長い時間がかかってしまう。従って、上記の暫定承認制度は、再生医療製品にだけ適用するのではなく、難病治療薬にもこれを適用し、難病治療薬の承認を迅速化すべきである。

4.こうした主張を厚労省に対して行い、また、直ちに私から自民党にお願いして、塩村理事には4月10日の自民党:厚生労働部会のヒアリングにも来て頂き、明確に意見を述べて頂いた。

5.上記の2点のうち、保険適用の問題については、法改正を踏まえて今後別途検討される予定であるが、その結論が出ない段階で、難病治療薬もこの暫定承認制度に載せてしまうことには(保険適用されなくなってしまう)リスクが伴うと思われるため、厚労省と詰めた話し合いを行い、難病治療薬については当面、次のような取扱いとすることについて合意した。

(1)難病治療薬については、「承認」の段階では他の薬に優先して手続きを進めるという制度(オーファンドラッグ制度)がすでに導入されているが、治験の段階についてはこれまで特段の対応は取られてこなかった。
厚労省は、この点について改善を行うため、今年度、一定の予算を確保し、難病治療薬の治験のあり方について、でき得ればガイドラインのようなものを設けられないか、調査研究を進める。
(2)調査研究の進捗状況については、厚労省から私まで適時に報告してもらう。
(3)その結果を見つつ、暫定承認制度の難病治療薬への適用については、なお引き続き検討を行う。

6.今回、難病治療薬への暫定承認制度の適用というところまでは、一気に進めなかったが、厚労省に対しては、有効な問題提起を行うことができた。
 また、厚労省も当方の問題提起を真摯に受け止め、難病治療薬の治験段階の実態のレヴューが行われることになったのは、大きな成果であると考えている。
 今後の厚労省のレヴューの状況をしっかりフォローし、承認の迅速化につなげるよう取り組んで参ります。