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受け入れられない!【7対1入院基本料】が招く医療の地域格差

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鈴木外科病院院長 鈴木和喜(本庄市)

2007.04.25

誤った医療制度改革

わが国の国民皆保険制度は、すべての国民が良質な医療を平等に受けることができる、世界に誇れる制度です。日本の平均寿命は世界一高いにもかかわらず、医療費はOECD加盟30カ国中において17番目と低く維持されているため、世界保健機構や諸外国からは優れた医療制度として高く評価されています。
しかし、小泉前内閣が進めた財政優先の医療制度改革により、医療提供体制が崩壊しつつあります。医療費削減策により、小児医療・産科医療や救急医療体制の維持は困難となっています。地域医療の提供体制の構築のためには,医療機関の医療機能連携を強化する必要があるにもかかわらず、全く逆方向に、それを破壊するような措置が取られました。

2006診療報酬改訂が招いたもの

平成18年4月に行われた診療報酬改定では、看護職員1人が受け持つ入院基本料を変更し、手厚く看護師を配置した病院は、より高い報酬を得られるようになりました。それが【7対1入院基本料】です。一定以上の配置を満たせば、より高い入院基本料を算定できるため、大規模病院や都市部病院による看護師採用の動きが拡大しています。【7対1入院基本料】の届け出状況は、ほぼ病床規模に比例しており、また東京や大阪で届け出が進んでいる一方で、東北、北陸では届け出数が少なく、地域差が生じています。大学病院などを中心に、大量に看護師を募集しているため、地方の中小病院における看護師不足に拍車がかかっているのです。その要因は、看護配置による入院基本料の差があまりにも大きいことにあります。看護師数により、病院間に大きな収入の格差が生じる政策がとられたためです。

地域医療の崩壊につながる医療政策

このような看護師不足が生じることは、当然予測できたにもかかわらず、厚生労働省は、極めて不適切な医療政策を断行しました。本来ならば、看護師数全体を増やすことが必要不可欠であるにもかかわらず、それをせずに、こうした措置をとった結果、看護師を一定数以上配置できない地方の中小病院は、同じ看護をしているにもかかわらず大幅な赤字となり、病床閉鎖に追い込まれています。このままでは地域医療が短期間のうちに崩壊することは明白です。

今なすべきこと

つまり、医療の分野においても、激しい地域格差が生まれ、地方切捨て、弱者切捨てが行われようとしています。地方における医療制度崩壊の流れは、なんとしても阻止しなくてはなりません。そのためには、正確な予測に基づき医療提供体制を構築し、国民皆保険制度を堅持する必要があります。

(注)「7対1入院基本料」とは
看護師1人が受け持つ入院患者の数が7人以下の場合には、病院が受け取る診療報酬が大きく加算される仕組みです。看護師の勤務は、3交替で行う必要があるため、この基準の場合、実際には、患者1.4人に対して看護師1人の配置が必要となります(注、3交替に加えて看護師の休日もありますのでこのような数字となります)。